オーストラリアのレストランにおける現代のブッシュ・タッカー

この5年間に著しい変化がありました。食の地域性を称賛するグローバル・トレンドの一環ともいえます。オーストラリアのシェフたちは、ヨーロッパやアジアでよく使われる味付けやテクニックを原産食材に用いて料理に仕上げ、成功しています。その腕前と慎み深さは注目に値します。このシェフたちが原産食材にハイライトを当てたのは、目先が変わるからだけではなく、味がとてもよいからです。 オーストラリアのレストランにおける現代のブッシュ・タッカー
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オーストラリアのレストランにおける現代のブッシュ・タッカー


土地原産の食物に再び光が当てられています。国内の一流シェフによって取り入れられ、「ブッシュ・タッカー」の地位を抜け出して現代のレストランのメニューにさりげなく登場しています。

この5年間に著しい変化がありました。食の地域性を称賛するグローバル・トレンドの一環ともいえます。オーストラリアのシェフたちは、ヨーロッパやアジアでよく使われる味付けやテクニックを原産食材に用いて料理に仕上げ、成功しています。その腕前と慎み深さは注目に値します。このシェフたちが原産食材にハイライトを当てたのは、目先が変わるからだけではなく、味がとてもよいからです。

優れたシェフに最も好まれる食材とそれらが味わえる場所をご覧ください。

カンガルー

オーストラリア全土で入手できる伝統的な原産食材です。カンガルーはイギリス人入植者にも好まれ、濃い赤色で狩猟肉のような風味はシカやウサギに例えられました。ブッシュの中で主婦は尾を使って栄養満点のスープを作ったものです。20世紀に入って数十年間は人気が落ちていましたが、1990年代初頭から「ルー」はオーストラリア中のメニューに戻って来ました。カンガルー肉は健康に気を配る人々に人気があります。脂肪がとても少なく、たんぱく質やミネラルの含有量が高いからです。最高級のカットをアジア風の味付けで炒めるか、シンプルにグリルにしてもよいですね。焼き具合はレアかミディアムがお勧めです。ダーウィンではカンガルー・バーガーが市場のスタンドで売られています。また、アデレードに新しくオープンしたストリートADL(Street ADL)は賑やかでカジュアルな店ですが、バーとレストランではカンガルー肉がストリート・フード風にアレンジされています。ほぐしたカンガルー肉のサンドイッチやルーの肩肉が、南オーストラリア州らしくメニューに誇らしげに掲載されています。ストリートADLの上の階には同じ経営陣による高級レストラン、オラナ(Orana)があり、この店も原産食材にこだわっています。 

ヴュ・ドゥ・モンド、
メルボルン、ビクトリア州

ワラビー

ワラビーの肉はカンガルーに比べると色が薄く、味がマイルドです。ヘルシーな特長は同じです。脂肪が少ないため、本来の柔らかさや肉汁の多さを活かすには加熱するときに特に注意しなければなりません。タルタルやカルパッチョとして生で食べるのが最適です。原産食材を推進するシドニーのシェフ、カイリー・クオンは、さまざまな方法でワラビーを提供します。たとえば、テンダーロインをトウチと唐辛子で炒めたり、ひき肉のレタス包みに仕上げたり、煮込んだすね肉にソルトブッシュとキノコを添えたりしています。メルボルンのヴュ・ドゥ・モンド(Vue De Monde)では、テーブルのすぐそばで58℃に熱した板状のヒマラヤ岩塩に細切りの生肉を乗せて軽く塩味を付けます。出来上がると、ハーブのソースにビーチ・マスタードとマリーゴールドの花びらを添えて供せられます。 

エミュー

脂肪が少なく狩猟肉に似た深い味わいがあります。エミューは背の高い飛べない鳥で、オーストラリアの紋章にカンガルーと並んでいます。赤身肉で、通常はグリルでさっと焼くかローストします。燻製や塩漬けにして加工肉の盛り合わせにすることもあります。ブリスベンにある評価の高い原産食材専門レストラン、タッカ(Tukka)でエミュー肉を味わってみてください。シェフのブライアント・ウェルズが手掛けた自家製スモーク・エミュー・フィレが、ベアルネーズ・ソース、ゴールデン・エシャロットのコンポート、フォンダン・ポテトと一緒に供されるかもしれません。 

オラナ、アデレード、
南オーストラリア州

ザリガニ

この淡水産甲殻類は西オーストラリア州で最大、州の漁業省によれば、世界では3番目に大きなものだそうです。西オーストラリア州原産ですが、南オーストラリア州でも養殖されています。オーストラリア大陸の南部や西部のアボリジニの人々はずっとザリガニを好んできました。レジャーとしてのザリガニ釣りは、夏のごく短い期間だけ解禁され、西オーストラリア州の伝統になっています。尾と爪の身は白くて甘みがあり繊細です。ゆでてもソテーやローストでも美味しく味わうことができます。ザリガニは高級な食材で、高級志向のレストランのメニューによく登場します。メルボルンの新顔ザ・プレス・クラブ(The Press Club)では、クリーミーな自家製タラマと一緒に供されることでしょう。評判のヴァス・フェリックス(Vasse Felix)ではザリガニがメニューの主役です。このワイン・レストランは、ザリガニの本場、西オーストラリア州のマーガレット・リバーにあります。 

ワトルシード

オーストラリアには何百もの種類のアカシアが生息しています。すべての種子が食用になるわけではありませんが、国の花であるゴールデン・ワトルなどいくつかは食用になります。種子をローストして細かく挽くと、ヘーゼルナッツにも似た木の実のような風味が出て、塩気のある料理にも甘いお菓子にも合わせることができます。ワトルシードの粉はケーキやパンケーキの生地、クッキーにも使われます。粉末をスパイス・ミックスに混ぜて肉にまぶすこともできます。コーヒーのような飲み物を作ることもでき、それをソースやアイスクリームの味付けに使うこともできます。ノーザン・テリトリーのタリ・ウィル(Tali Wiru)ではワトルシード入りのホット・チョコレートがディナーのフィナーレを飾ります。ここでは、ウルルを眺めながら、広大なアウトバックの空の下でロマンチックなディナーを楽しむことができます。

ブッシュ・タッカー

地域原産のベリーと小さな果物

オーストラリアのどの地域にも、その土地原産の食用になるベリーがあります。クァンドン(ビャクダンの実)は、オーストラリアの多くの地域における主要な原産食物で、現在は商業的に栽培されています。生で食べることも乾燥させることもできる便利な果物です。ジャムやチャツネに加工されることもあります。デビッドソンズ・プラムは、オーストラリアの東海岸で生育します。果皮は深い紫色、ジューシーで酸味のある果物です。普通は酸っぱすぎて生食に向きません。ソースやシロップに漬けて保存します。南オーストラリア州やビクトリア州の西部を原産とするマントリーは、サイズが小さいことや抗酸化物質の含有量の多さからよくブルーベリーと比較されます。摘みたての新鮮なものは、サクサクした歯触りでどちらかといえばリンゴのような味です。生で食べられますが、冷凍できるため季節外れのデザートに使えます。メルボルンのチャコール・レーン(Charcoal Lane)のメニューには、これらに限らずもっと多くの果物が頻繁に登場します。モダンなメニューにオーストラリア原産食材を使う洗練された小さなレストランです。

フィンガー・ライム

この熱帯雨林産の小さな円筒形の果物によってライムの概念が変わりました。切り開くと、極めて小さくてみずみずしいキャビアのような粒が現れます。色は薄い緑から鮮やかなピンクに至るグラデーションです。スプーンですくって彩りや風味付けにしますが、キングフィッシュのカルパッチョから繊細なシトラス・タルトまで何にでも使えます。美しい形、はっきりした酸味、口の中でプチプチとはじける食感が好まれ、旬の時期(12月から5月)にはオーストラリア中の高級レストランのメニューによく登場します。殻を開けたてのカキの上に乗せるのは定番です。美味しそうですし、柑橘系の風味付けにもなります。フィンガー・ライムは、ニュー・サウス・ウェールズ州北部とクイーンズランド州南部の森が原産です。バイロン・ベイに近いバンガローのタウン(Town)では、オーナー・シェフであるカールとカトリーナのカネタニ夫妻が、週3日だけ本格的な6コースのデギュスタシオン・ディナーを提供しています。オーストラリアを代表するパティシエの1人であるカトリーナは、地域で採れた地元原産の食材を好んで使います。毎年フィンガー・ライムのシーズンの夏が来ると、彼らは地元の農家からフィンガー・ライムを仕入れて料理にもデザートにも使います。