オーストラリアのアボリジナル文化体験を楽しむ10日間
壮観な風景の中で、人里離れたコミュニティを訪ねたりブッシュ・タッカーを採りに行くアドベンチャー満載の旅程に参加して、オーストラリアで最も古い文化にどっぷりとつかりましょう。
原文:ウテ・ジュンカー
ノーザンテリトリーは、荒々しい砂岩の絶壁や北の静かな天然プールからレッド・センター(Red Centre)の目がくらむような美の世界まで、アボリジナル文化に溢れる場所です。変化に富んだこの旅程では、聖域や繁栄しているアボリジナルコミュニティを訪れることにより、古代のドリームタイム・ストーリーや現代のサバイバルなどについて学びます。
この旅程にはレンタカーが必要です。舗装していない道を運転したり、日暮れ時以降のドライブに関する規制があるため、レンタカー会社のポリシーを把握することが大切です。夜間のドライブに関する規制や、訪問予定の行き先に4WDが必要かなど、レンタカー会社のポリシーを確認しておきましょう。
見どころ
- 素晴らしいウルルを含む砂漠中央部の聖域を訪れる
- アーネム・ランドにいる遠方のコミュニティの歓迎を受ける
- カカドゥ国立公園の古代の壁画を見る
基本データ
- 日数:10日間
- 距離:3,200km
- 移動手段:飛行機、車、ボート
- 最寄りの主要都市:アリス・スプリングスとダーウィン
- 料金:$$$
1日目:ユララ(ウルル)
エアーズ・ロック(Ayers Rock)空港でレンタカーを借りてエアーズ・ロック・リゾート(Ayers Rock Resort)に向かいましょう。ここの宿泊施設は五つ星のセイルズ・イン・ザ・デザァト(Sails in the Desert)リゾートから家族向けアパートまでそろっています。リゾート内のウィントジリ・アーツ・アンド・ミュージアム(Wintjiri Arts and Museum)にはアボリジナルピープルやトレス海峡諸島の人々のアーティストが手掛ける作品が展示されています。アーティストが作品を製作しているところを見学したり、出来上がった作品をお土産用に購入することもできます。小売店では、地元のアボリジナルピープルやトレス海峡諸島の人々が製作したジュエリー、絵葉書、クッション、織物、台所用品などを販売しています。午後になると、才能あるアボリジナルダンサーが伝統的な儀式で行うダンスや歌のパフォーマンスを無料で披露してくれます。この他にも、SEITアウトバック・オーストラリア(SEIT Outback Australia)の午後のツアーに参加して、伝統的なウルルの家族に自治区で会い、文化や家族の歴史を体験することもできます(このツアーは夏季の朝7:00に出発します)。次にリゾートのスーパー・マーケットでピクニックの食材を買って日没を見る見晴台まで運転して、ウルルやカタ・ジュタの聖地が日の入りで色が変わる様子を見学してみましょう。
2日目:ウルル ー カタ・ジュタ国立公園
ウルル - カタ・ジュタ国立公園(Uluru-Kata Tjuta National Park)まで車で行き、入り口で駐車券を買います。カルチャー・センター(Cultural Centre)を見学したら、マラ・ウォーク(Mala Walk)駐車場から出発する無料のガイド付きツアー、マラ・ウォーク(Mala Walk)に参加してみましょう。岩の麓を行く2kmのハイキング・コースには地元アナング族が継承するアボリジナルピープルの伝統文化が満載で、古代の壁画を見学することもできます。エネルギッシュな気分の人は続けてウルルの麓周囲も散策できますが、こちらは10kmありますのでご注意ください。また、マルク・アーツ(Maruku Arts)専門ツアーに参加することもできます。このツアーでは、アナング族のスタッフが独特の風景の話をしたり、芸術、文化、土地の関係について説明してくれます。この後はハンズ・オンで絵画を習い、芸術と伝統的なアナング族の文化の意味についても学びます。午後はゆっくり過ごして、夜のアウトバック・スカイ・ジャーニー(Outback Sky Journey)に備えましょう。砂漠の棲み切った空は星空観察に最適です。アボリジナルピープルがどのように星座を解釈したり星を使って季節を予測したかについて、天文学のガイドが説明します。
3日目:ウルル・カタ・ジュタ国立公園
訪れる価値のある大きな岩はウルル(Uluru)だけではありません。ウルルからおよそ30kmの場所にあるカタ・ジュタ(Kata Tjuta)も同様に壮観です。36個のハチの巣の形をしたドームは、遠くからだと通り抜けられないように見えます。しかし7.4kmのバレー・オブ・ザ・ウィンズ・ウォーク(Valley of the Winds Walk)を通ればドームの中央に隠れている草原と木で縁取られた小川の底を行くことができます。日の出とともに歩き始めましょう。このコースはだいたい4時間かかり、正午には温度が急上昇します。この辺りはアナング族の聖域で、写真撮影はほぼすべて禁止されています。その理由は、スピリチュアルな雰囲気を感じられますから、ここに来たら自ずとわかることでしょう。午後はリゾートでリラックスしながら過ごします。アボリジナルアーティストに会い、作品を買える施設内のアート・ギャラリーを探索してみたり、施設内の素晴らしいデイ・スパもおすすめです。夜はサウンズ・オブ・サイレンス(Sounds of Silence)でオーストラリア産食材が特徴の食事体験をしましょう。砂漠の真ん中にある赤い砂丘で、忘れられない食事となることでしょう。
4日目:ウルルからダーウィンへ
オーストラリアのアボリジナルピープルの芸術は、世界で最も古い現在も継承されている伝統芸術で、動物のX線イメージやドット・ペインティングなど、独特のスタイルで知られています。アボリジナルピープルの芸術は美だけでなく、情報を伝達する重要なツールでもあります。現在は、観光客もリゾート内のドット・ペインティング・ワークショップでアボリジナルピープルにインスパイアされた自分の作品をアボリジナルピープルのアナング族のアーティストの指導を受けながら作ることができます。また、リゾート地にある無料のブッシュ・タッカー・ツアーに参加して、地元の食事に欠かせない動植物について学ぶこともできます。午後になったら飛行機でダーウィンに行き、この旅行の次のステージに備えて、たくさんのホテルの中から宿泊場所を決めましょう。
5日目:ダーウィンからティウィ諸島へ
ダーウィンの海岸からおよそ100kmの場所にあるティウィ島(Tiwi Islands)は、アボリジナルピープルが独特の文化を築いているほぼ未開の美しい島々です。27島のうち、人が住んでいるのは2島だけです。バサースト島(Bathurst Island)への1日ツアーに参加するには、ダーウィン市内の中心部から5分で行けるカレン・ベイ・フェリー・ターミナル(Cullen Bay Ferry Terminal)から2時間フェリーに乗ります。地元の女性がスモーキング・セレモニーであなたを歓迎します。ビリー・ティーとダンパー(手作りパン)をお楽しみください。女性たちはトーテム・ダンスを披露し、織物や絵画の技術を見せてくれます。地元の美術館でティウィ・ドリームタイムの話や伝道者の影響について学び、地元のアートとクラフトの協同組合に立ち寄りましょう。ダーウィンに帰る前の最後の観光場所は、独特なティウィの埋葬用ポールでマーキングされた埋葬地です。
6日目:ダーウィンからカカドゥ国立公園へ
レンタカーを借りてダーウィンからカカドゥ国立公園(Kakadu National Park)のゲートウェイ、マリー・リバー地域(Mary River Region)に向かって50分ドライブします。パダクル(Pudakul)に着いたら曲がり、午前10:30に出発する2時間のパダクル・アボリジナル・カルチュラル・ツアーズ(Pudakul Aboriginal Cultural Tours)に参加しましょう。アデレード・リバー(Adelaide River)氾濫原の熱帯ブッシュランドにある密集したポケットは、鳥類、植物、花々に溢れた地域です。パダクル・アボリジナル・カルチュラル・ツアーズは、知識が豊富なノーザンテリトリーの元パーク・レンジャー、グラハム・ケニヨン氏が率いる家族経営のビジネスです。ケニヨン氏はケニヨン夫人と愛娘たちと一緒にリミルンガン(Limilngan)とウルナ(Wulna)の土地を2時間のイマージョン・ツアーで案内しています。この家族の結束は固く、ビアトリス・ヒル(Beatrice Hill:昔からの呼称は「ルダウェイ(Ludawei)」)に生息する首の長い亀のドリーミング・ストーリーを伝承しています。原始的で自然のままの湿地に足を踏み入れ、地元のブッシュ・タッカーや薬草、バスケットやバッグの製作、槍を投げたり、拍手杖やディジュリドゥなどの楽器の演奏を学ぶことができます。ツアー後は、リラックスしながらダンパー(伝統的なブッシュパン、暖炉の上で調理したもの)とお茶を飲みながら会話を楽しみましょう。
午後はジャビル(Jabiru)まで2時間ほど移動してアンビニク・スイート(Anbinik Suite)を予約しましょう。ここに着いたらアドベンチャーかリラクゼーションのどちらかを選べます。アンビニクのスタッフがどんなオプションがあるか説明してくれます。ジャビルの町を出てすぐの場所にあるボワリ・ビジターズ・センター(Bowali Visitor Centre)に訪れて、アボリジナルピープルとアボリジナルピープル以外の視点で見たカカドゥの生態系に関する説明を読んでみましょう(カカドゥ国立公園へのパスはここで買います)。ノーランジー・ロック(Nourlangie Rock)やウビル(Ubirr)の眺めを楽しんだり、アンビニクの有名なタイ料理のレストランでリラックスしながら夕食を味わうのもよいでしょう。
7日目:カカドゥ・カルチュラル・ツアーズで行くキャノン・ヒル
7日目の朝は、カカドゥの眺めに圧倒されるための時間を作りましょう。国立公園の上空を遊覧飛行して、驚異的な滝、氾濫原、絶壁の眺めを自分のものにしてください。ジャビル(Jabiru)から車で41km走り、14時半までにボーダー・ストア(Border Store)に到着します。車をボーダー・ストアの敷地内に駐車して、15時までに荷物を用意したらホーク・ドリーミング・ウィルダネス・ロッジ(Hawk Dreaming Wilderness Lodge)で2泊しましょう。このロッジはジャブルク協会(カカドゥ北部とアーネム・ランド西部の一部の伝統的所有者を代表している団体)が所有するカカドゥ・カルチュラル・ツアーズ(Kakadu Cultural Tours)が運営しています。このツアーでは、カカドゥの中でも遠方の立ち入り制限区域にある人里離れたロッジに連れて行ってくれます。キャノン・ヒル(Cannon Hill)というこの区域は、地元のアボリジナルピープルにとって大変重要な有名な場所で、今でも多くの人がこの近くに住んでいます。この登録された聖域であるキャノン・ヒルは鳥類と海の生物であふれており、あなたにもここへ行く許可が下ります。 午後はガイド付きサンセット壁画ツアーを楽しみ、ロッジで3コースの夕食を堪能しましょう。
8日目:4WDで行くアーネムランダー・カルチュラル・アンド・ヘリテージ日帰りツアー
カカドゥ・カルチュラル・ツアーズは、4WDで行くアーネムランダー・カルチュラル・アンド・ヘリテージ日帰りツアー(Arnhemlander Cultural and Heritage 4WD day tour)に進みます。8日目は広大な氾濫原、高くそびえる絶壁、壁画、作品を手がけているアボリジナルピープルを見て回ります。イースト・アリゲーター川(East Alligator River)沿いにケーヒルズ・クロッシング(Cahill’s Crossing)を渡ってアーネム・ランド(Arnhem Land)へ行き、約200人の活動的な会員がいるアボリジナルピープル所有の非営利コミュニティ・アート・センター、インジャラク・アーツ(Injalak Arts)に向かいます。インジャラクは、手刷りリネンのボルトとカラフルな創造の霊のデザインを刺繍した絹で有名になりました。素晴らしい織物、絵画、手編みのバスケット、木彫り、ジュエリー、本などをじっくり見てみましょう。アボリジナルピープルが絵を描いたりパンダナス製バスケットを編んだりしているところを見る時間もあります。ここで売られている作品やクラフトにはすべて証明書がついています。昼食は、静かな水面と壮大な眺めを楽しみながらインキュウ・ビラボン(Inkiyu Billabong)でどうぞ。夜はロッジに帰って夕食にする前に、キャンプ周辺のサンセット・ツアーに参加して、前夜とは異なる場所を訪問するチャンスです。
9日目:グルヤンビ・カルチュラル・クルーズからキャサリンのニトミルク・ツアーズへ
午前9時になったらカカドゥの見事なイースト・アリゲーター川(East Alligator River)を行くグルヤンビ・カルチュラル・クルーズ(Guluyambi Cultural Cruise)に出発です。上流へ向かってゆっくりと進み、過ぎゆくクロコダイルを数えながら、あなたを取り囲む世界遺産原生地域に身を任せましょう。アボリジナルガイドが彼らの文化を覗かせてくれ、川の豊かな食物連鎖、動植物の伝統的な用途、代々受け継がれているサバイバル・スキルの知識を披露してくれます。川のアーネム・ランド(Arnhem Land)側でクルーズを降り、伝統的な狩りや採集の道具の展示を見学しましょう。このクルーズは25名限定なので、パーソナルな文化体験を楽しめるはずです。
ツアーの後はキャサリン(Katherine)まで303kmの景色の良いドライブを楽しみましょう。素晴らしい滝や天然プールをお見逃しなく。時間が許すなら、立ち寄る場所は数えきれないほどあります。60種の鳥や猛烈な水牛、クロコダイルが生息する壮大な湿地帯に向き合えるイエロー・ウォーター・クルーズ(Yellow Water Cruise)で休憩しにクーインダ(Cooinda)に行ってみましょう。この近くには、アボリジナルピープルのアートやカカドゥの歴史に関するコレクションを収蔵したワラジャン・カルチャー・センター(Warradjan Cultural Centre)があります。
キャサリンから30kmドライブしてニトミルク国立公園(Nitmiluk National Park)に行きましょう。13の渓谷からなる見事なネットワークにキャサリン川(Katherine River)が水を注いでおり、薄くて高い崖が立ち並んでいます。ここはジャオイン族の人々が住む場所でもあります。公園には壁画が点在していて、ジャオイン族のストーリーが渓谷の無言の壁に生命を吹き込んでいます。アボリジナルピープルが100%所有するニトミルク・ツアーズ(Nitmiluk Tours)では、クルーズ、ハイキング、洞窟ツアー、水泳、カヌー・ツアー、そして美しい風景を楽しむヘリコプター遊覧飛行など盛りだくさんで、ジャオイン族の国と文化の最高のところを楽しめます。宿泊施設はキャンプ場やシャレーからラグジュアリー・ロッジ、シカーダ(Cicada)までのすべてがそろっています。
10日目:ニトミルク・ツアーズで渓谷を探索する
ビジター・センター(Visitor Centre)のシュガーバグ・カフェ(Sugarbag Café)で1日を始めましょう。このカフェは朝食と昼食の時間に営業していて、屋外のデッキからニトミルク渓谷(Nitmiluk Gorge)の素晴らしい眺望を楽しむことができます。ビジター・センターの展示センターと遺産博物館(Display Centre and Heritage Museum)を訪れてニトミルク渓谷と国立公園の不思議への心の準備をしましょう。次に、ニトミルク・ツアーズ(Nitmiluk Tours)が提供するジャオイン族の慣習、信条、壁画に焦点を当てたカヌー・ツアー、ヘリコプター遊覧飛行、水泳ツアー、カルチュラル・クルーズなどの数多いアクティビティから好きなものを選べます。日の出やサンセット・ディナー・クルーズのときに、渓谷の色合いが濃さの異なるふじ色や赤に変わる様子を見てみましょう。ヘリコプター遊覧飛行は、国立公園内の13か所の渓谷と壁画を独自に探索する素晴らしい方法で、癒し効果のある原生地域の岩の飛び込みプールでひと泳ぎすることもできます。渓谷沿いにカヌーをマイペースに漕ぐと、とてもリラックスしながらジャオインの美しさにどっぷりと浸かることができます。浅いプールに入ったり静かなビーチで少し休んだり、ハイキング・トレイルの探索などに時間をかけましょう。ハイキングするならトレイルや滝の名所は豊富にありますが、究極のトレイルは62kmのジャビュラ・トレイル(Jatbula Trail)です。
キャサリン(Katherine)に近い場所にいるなら、ニトミルク・ツアーズが魅力的なクッタクッタ洞窟(Cutta Cutta Caves)を通るガイド付きハイキングを催行しています。トップ・ディジュ・アート・ギャラリー(Top Didj Art Gallery)のたくさんの芸術作品、ディジュリドゥ、工芸品、ギフト、本などをじっくり観察するのも楽しいでしょう。午前中または午後はアボリジナルピープルのアーティストが教える体験に参加して、アボリジナルピープルのシンボル、イラスト、体験談を語る技術を使いながら自分の作品を製作できます。キャサリン近郊で数日過ごしても良いですし、290kmほどドライブしてダーウィンに戻ることもできます。