キャンベラのアボリジニ・アート

アボリジニの追憶(Aboriginal Memorial、1987~88年)、ラミンギニ(Ramingining)の芸術家たち、オーストラリア国立美術館(National Gallery of Australia)、キャンベラ(Canberra)、オーストラリア首都特別地域。

キャンベラのアボリジニ・アート

オーストラリア国立美術館(National Gallery of Australia)に行って、さまざまなアボリジニ・アートを心ゆくまで味わいましょう。全部で13ある展示室には、点描画や樹皮に描かれた絵から水彩画、織物、版画、陶器、彫刻まで、7,500以上の作品が展示されています。いくつかのテーマに分けて作品を並べている展示室を見てまわれば、それぞれの作品群の背景にはどんな土地やドリーミング(神話)の物語、歴史上のできごとがあるのかがわかるはずです。これらの貴重なコレクションは、現存する世界最古の文化、しかも現在もなお進化を続けている文化の生き証人なのです。

アボリジニ・アートには信じられないほど色々なものがありますが、どの作品も必ず土地や土地の精霊たちと関連した物語やテーマが背景になっています。国立美術館に展示されている数多くの作品の中を歩くと、その表現方法や使われている絵具、さらには感性のあり方がどれほど多様なものであるかがわかります。

各展示室には特定の時期、あるいは特定の地域の作品が展示されています。例えば19世紀に作られたアボリジニの手工芸品の展示室では槍、彼らの楽器デジュリドゥ、かご、儀式のための道具、今では作られることもなくなったものなど貴重な資料が並んでいます。またアーネム・ランド(Arnhem Land)西部で古代に作られた樹皮画や彫刻が展示されている部屋もあります。カカドゥ国立公園(Kakadu National Park)で見つかったレントゲン写真のように動物の体の中まで描かれている面白い技巧の絵を間近に眺めたり、何本もの平行線で描かれたドリームタイムの人物像など、興味はつきません。

早期西部砂漠(Early Western Desert)の絵画や、1971年から1974年にかけて遥か中央オーストラリアにあったパプンヤ・コミュニティのパプンヤ・スクール(Papunya School)のことも知ってください。パプンヤの子どもたち(後には大人たちまで)が、ジェフリー・バードン(Geoffrey Bardon)という絵の先生の指導のもと自分たちの部族に伝わるドリーミングの物語をキャンバスに描き始めました。彼らが描きはじめた点描画は後に中央部砂漠各地に広がっていき、やがてオーストラリアの美術市場を一変させ、世界にアボリジニの美術を知らしめる力となったのです。

隣の部屋には1975年以降のデザート・ペインティングが展示され、パプンヤの絵画の形成過程を知ることができます。いずれの作品もますます実験作品的な色あいを帯びてきていて、色彩豊かで抽象画のような表現を採用しつつ、歴史上の出来事や最近の出来事、さらにドリームタイムの物語などを主題としてとりあげています。

また、西欧絵画の技法を初めて採り入れたアボリジニの画家の一人で、たいへん評価の高いアルバート・ナマジラ(Albert Namatjira)の水彩画も観賞してください。彼と同じハーマンスバーグ・ミッション(Hermannsburg Mission)出身の他の画家たちの作品も展示されています。いずれもナマジラから水彩画の描き方を習った人たちで、彼らの絵のスタイルはハーマンスバーグ・スクール(Hermannsburg School)様式と呼ばれています。

西オーストラリア州キンバリー地方の岩絵に見られるワンジナ(Wandjina)の棒線画や、中央オーストラリアに住むアンマティアー族(Anmatyerr)やアリアワー族(Alyawarr)の女性たちが自分で織った布にスクリーン印刷で絵を刷り込んでつくった作品も見ごとです。またトレス海峡諸島(Torres Strait Islands)の先住民がつくる興味深い作品だけを展示している部屋もあり、精巧につくられた仮面や版画なども飾られています。さらに別の部屋には、クイーンズランド州北部とトップ・エンド一帯でつくられた絵や彫刻、陶器などのアボリジニ・アートが展示されています。

美術館はこのほか、写真家や都市の壁に作品を描く画家など、アボリジニの現代美術にも力を入れています。政治的なメッセージを込めた作品や現代的な問題の提起を意図した挑発的な作品も多数あります。中でも中心的存在なのが、アボリジニの追憶(Aboriginal Memorial)と題されたインスタレーションです。1988年に完成したこの作品は、丸太でできた中空の棺を200個並べて、200年にわたる西洋人の支配のあり方を象徴的に表現したものです。

オーストラリア現代美術館をじっくりと見てまわれば、アボリジニ・アートの幅広さと奥深さに感動するはずです。

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