オーストラリアで信仰的とされるものは、宗教ではなくメルボルンで開催されるオーストラリアン・ルールズと呼ばれるフットボール(AFL)かもしれません。これはまさにスポーツの原点が垣間見えるゲームで、そこで活躍する選手はみな地元のヒーローとして扱われ、それぞれのチームには熱狂的なファンが存在します。もちろん、ラグビー・ボールと同じ楕円形のボールを使って行われるこの勇敢で激しいスポーツでわき返るのは、メルボルンだけではありません。 AFLはオーストラリアで一番人気のあるスポーツのリーグで、熱烈なファンのいるチームがシドニーやアデレード、パース、ブリスベンにもあります。オーストラリアという国が育て上げたこのスペクタクルなスポーツを、ぜひ競技場に足を運んで観戦してみましょう。おすすめは、盛り上がること間違いなしのグランド・ファイナルですが、3月末から9月までの間ならその他の試合も楽しめます。
オーストラリアン・ルールズが正式に誕生したのは1859年、この年にメルボルン・フットボール・クラブが結成され、初めてルールが定められました。1897年にはカールトン、コリングウッド、エセンドン、ジーロング、メルボルン、セント・キルダのチームが加盟して、ビクトリア州フットボール・リーグが発足しました。これが元になって1989年にオーストラリアン・フットボール・リーグ(AFL)が発足し、今日ではオーストラリア各地の16チームが参加するまでに育っています。
スポーツとして組織化されるまで、オーストラリアン・ルールズはどのような経過をたどって現在のような形になったのでしょうか。まず1840年代、クリケット選手たちが冬の間も体力を落とさないようにしようと考え、ビクトリア州各地の広く、芝生が整えられたグラウンドでプレーを始めました。それがどのようにして現在のルールになっていったのかについては議論が分かれるところですが、歴史家の指摘によると、アイルランド人たちが楽しんでいた「ケイド」(caid)というゲームや、ラグビー、マーングルック(marngrook)というアボリジニの伝統的なゲームなどがいずれも影響を与えて、それらが混じり合う形で生まれたのではないか、と言われています。
現在では18人の選手で構成される2つのチームが対戦し、楕円形のボールを蹴ったり投げたり走ったりしながらゴールポストに向けて進むというのがルールで、格闘シーンが演じられることもよくあります。ボールを持って2本のゴールポストのあいだを駆け抜けるか、ボールを蹴ってゴールポストの間を通すと得点が入り、その得点の多さを競います。ラグビーと異なり、オーストラリアン・ルールズは体をぶつけ合うスポーツで、手を使ってタックルしたり、体をぶつけて他の選手の動きを妨害することが許されています。
試合のシーズンは3月末から9月までで、ホーム・アンド・アウェイ形式で100試合以上が行われます。シドニー・クリケット・グラウンドが本拠地のシドニー・スワンズ(Sydney Swans)、パースのWACCAが本拠地のウェスト・コースト・イーグルス(West Coast Eagles)、ブリスベン・クリケット・グラウンド(Gabba)が本拠地のブリスベン・ベアーズ(Brisbane Bears)などのチームが有名です。AFLならではの興奮を味わいたい方は、オーストラリアを代表する競技場、メルボルン・クリケット・グラウンドで開催されるグランド・ファイナルが何といっても一番でしょう。対戦するチームの熱狂的なファンたちが応援しに来るので、街中がまるでカーニバルのような雰囲気に包まれます。何世代にもわたって一つのチームを応援しているファンも多く、大会前後にはメルボルンの街はグランド・ファイナルの話題でもちきりになります。
このオーストラリア育ちのスポーツは、どこで観戦しても一種独特の誇らしい気持ちと興奮を見るものに与えてくれます。 オーストラリアで最も人気のあるスポーツとして、ファンたちはどんな試合でも応援用の垂れ幕を用意し、選手たちはその下を走り抜けて出ていきます。また、AFLはオーストラリアのあらゆるスポーツの中で最もアボリジニの選手の多い競技でもあります。このスポーツはアボリジニのコミュニティ内でもきわめて人気が高く、ダーウィンの沖合にある緑豊かな島、ティウィ諸島では、3月のグランド・ファイナルが開かれる頃になると島全体が静まり返ってしまうほどです。
3月から9月のあいだにオーストラリアに来られる方は、ぜひともこのオーストラリア全体が夢中になるフットボールを観戦してみてください。