オーストラリアでホエールウォッチング
毎年オーストラリアの海岸沿いを回遊するミナミセミクジラやミンククジラ、ザトウクジラ、さらにシャチまで。彼らと出会う旅に出かけてみませんか。
オーストラリアの海岸線には、毎年回遊する何種類ものクジラを見るチャンスがたくさんあります。あらゆる種類の魚やオキアミ、プランクトンを食べながら、南極からやって来て、南極へと帰って行くクジラの行動は、「世界で最も長いランチ」として知られています。つまり東海岸と西海岸の両方で、年に2回、自分だけのクジラショーを楽しめる機会があるのです。夏の終わり、繁殖と出産の季節に備えて、クジラは北の暖かい海を目指して旅を始めます。小さな子クジラは脂肪が少ないので、冬の水温に耐えられないからです。5月から11月の間は、ミナミセミクジラが繁殖に適した温暖な海を目指して南オーストラリア州(South Australia)とビクトリア州(Victoria)沖を回遊します。活動的なザトウクジラは北のグレート・バリア・リーフ(Great Barrier Reef)やキンバリー(Kimberley)まで旅をし、シャチは西オーストラリア州(Western Australia)の南海岸沖に集まります。
彼らの雄大な美しさを眺めるのに最適なオーストラリア各地のおすすめスポットを紹介します。
ホバート近郊
時期:5月から7月まで&9月から12月まで
場所:言い伝えによると、ホバート(Hobart)郊外のタルーナ(Taroona)の住民はかつて、ダーウェント川(River Derwent)にいるクジラの音で眠れないと文句を言っていたそう。19世紀の捕鯨がクジラの個体数に劇的な影響を与えましたが、クジラの数は回復しつつあり、タスマニア州の東海岸は今もなお毎年回遊するクジラを見ることのできるベストスポットのひとつです。ピンク色の花崗岩の崖と神秘的な白い砂浜で知られるフレシネ半島(Freycinet Peninsula)。その沖にあるグレート・オイスター・ベイ(Great Oyster Bay)の澄み渡る海を、ザトウクジラとミナミセミクジラが海岸線に沿って泳いでいるのを眺めましょう。もうひとつのおすすめスポットは、フレデリック・ヘンリー・ベイ(Frederick Henry Bay)で、陸から濡れることなくクジラが通り過ぎるのを垣間見ることができます。ミナミセミクジラとザトウクジラは繁殖エリアへ向かう途中に湾を通過することが多いのですが、時折タスマニア州に留まり出産することもあり、岸からその姿を見るチャンスも。また自然の野生動物保護区、マリア島(Maria Island)沖のマーキュリー・パッセージ(Mercury Passage)でも、親子クジラを見られます。
方法:ブルーニー・アイランド・クルーズ(Bruny Island Cruises)の3時間ツアーに参加して、アドベンチャー・ベイ(Adventure Bay)で休憩しているクジラを観察しましょう。ペニコット・ウィルダネス・ジャーニーズ(Pennicott Wilderness Journeys)もまたホバートからクルーズと日帰りツアーを行っています。
パース近郊
時期:6月から11月まで
場所:西オーストラリア州(Western Australia)では、南海岸がクジラを見つけるのに最適の場所。ザトウクジラとミナミセミクジラは、6月上旬からマーガレット・リバー(Margaret River)ワイン産地にあるオーガスタ(Augusta)の美しいフリンダース・ベイ(Flinders Bay)に集まります。9月には、珍しいシロナガスクジラ(blue whales)の親子がダンズボロー(Dunsborough)にあるジオグラフ・ベイ(Geographe Bay)で、バンドウイルカ(bottlenose dolphins)に合流する様子も必見。もっと南にあるアルバニー(Albany)の岩だらけの海岸線もまた、景色の良い特別な観覧スポットです。ミナミセミクジラが、南へ戻る前の出会いと出産のためにアルバニーの湾に留まるからです。アルバニーの東2時間弱の場所にあるブレマー・ベイ(Bremer Bay)には、南半球最大のシャチの群れが集まります。リサーチ・ボートに乗って、彼らを探しに出かけましょう。アルバニーを訪れたら、歴史ある捕鯨基地(Whaling Station)でクジラについて学んでみるのもおすすめ。オーストラリアで捕鯨を中止するために、最後の捕鯨会社の本社に建てられた体験型博物館です。6月から11月まで、ザトウクジラは北西へ旅し、パースから飛行機で2時間半に位置するブルーム(Broome)まで向かいます。エクスマス(Exmouth)にあるニンガルーリーフ(Ningaloo Reef)はジンベエザメ(whale shark)と泳げる体験で有名ですが、南半球で最多のザトウクジラが見られる場所でもあります。6月から11月の間、約3万頭のザトウクジラがキンバリー海岸沖の出産場所を目指す途中に、エクスマスを通り過ぎるのです。この地域のツアー会社の多くが、この素晴らしい生き物と泳げる小グループツアーを催行しています。
方法:ナチュラリステ・チャーターズ(Naturaliste Charters)はアルバニー、オーガスタ(Augusta)、ダンズボロー、バッセルトン(Busselton)、ブレマー・ベイ出発の海のアクティビティを提供しています。ニンガルー・コーラル・ベイ・ボーツ(Ningaloo Coral Bay Boats)はコーラル・ベイ(Coral Bay)から4時間のクルーズを運行しており、ライブ・ニンガルー(Live Ningaloo)のザトウクジラと泳げるツアーはエクスマスから出発します。
シドニー近郊
時期:5月から11月下旬まで
場所:時折、有名なボンダイ・トゥー・クージー・コースタル・トラック(Bondi to Coogee coastal track)を歩いているシドニーの人々が運よく、北へ向かうザトウクジラの姿を見かけることがあります。クジラを最も見られる時期は、6月の最終週と7月の第一週。9月上旬にも、母クジラと子クジラが南へ戻る際にシドニーを通過するのを見つけるチャンスがあります。陸から見られる確率の高いポイントは、ワトソンズ・ベイ(Watsons Bay)にあるサウス・ヘッド(South Head)のザ・ギャップ(The Gap)。市外なら、中心街から南へ車で3時間走り、ジャービス・ベイ(Jervis Bay)へ向かいましょう。ここならほぼ確実に穏やかで澄み渡った海にクジラを見つけられるでしょう。ショールヘブン・ヘッズ(The Shoalhaven Heads)やクロークヘイブン・ヘッズ灯台(Crookhaven Heads Lighthouse)、カルブラ・ビーチ(Culburra Beach)のペンギン・ヘッド(Penguin Head)には眺めの良い展望エリアがあります。5月から11月の間は、ハスキッソン(Huskisson)から毎日クルーズが出発しているので、飛び乗ってみるのもおすすめ。さらに南へ3時間半走り、美しいサファイア・コースト(Sapphire Coast)にある海岸沿いの街、メリンブラ(Merimbula)へ行けば、沿岸からと貸し切りボートの両方でホエールウォッチングを楽しめます。エデン(Eden)の街では、クジラの到来を毎年祝ってエデン・ホエール・フェスティバル(Eden Whale Festival)を開催しており、ライブショーやパレード、地産農産物の露店で賑わいます。また6月からバイロン・ベイ(Byron Bay)のケープ・バイロン灯台(Cape Byron Lighthouse)でも、この巨大で優雅な生き物が沖合で遊ぶ姿を眺められます。
方法:ホエールウォッチング・シドニー(Whale Watching Sydney)の3時間ディスカバリー・クルーズを予約して、サーキュラー・キー(Circular Quay)から出発し、東海岸に向かう途中のザトウクジラがいるシドニー・ハーバー(Sydney Harbour)へ繰り出しましょう。ジャービス・ベイ・ワイルド(Jervis Bay Wild)も、ハスキッソンを出発してジャービス・ベイを巡るエコ・クルーズを提供しています。メリンブラ・マリーナ(Merimbula Marina)は5月から11月にわたって定期的にホエールウォッチング・クルーズを催行しており、成功率は100%です。
アデレード近郊
時期:6月から9月まで
場所:アデレード(Adelaide)から南へ80kmに位置するビクター・ハーバー(Victor Harbor)は、ラミンジェリ族(Ramindjeri)の人々と植民地時代初期の開拓者が同様に、豊かな土地と穏やかな海、そしてクジラを高く評価していた、重要な歴史ある場所です。休暇中の人々が海岸沿いのエリアに集まって、透き通ったターコイズ色の海を満喫し、毎年繁殖にやってくる威厳あるミナミセミクジラを含む豊かな野生動物との出会いを楽しみます。ビクター・ハーバーのエンカウンター・ベイ(Encounter Bay)周辺の急な崖の上に立ち、穏やかな海で飛んだり跳ねたりするクジラを見下ろしましょう。もっといい方法はツアーを予約して、フルリオ半島(Fleurieu Peninsula)のさらに沖合の海でミナミセミクジラが赤ちゃんと遊んでいる姿を見に行くこと。南オーストラリア州(South Australia)のギザギザの海岸線に沿ってさらに遠くのセドゥナ(Ceduna)に行けば、展望台やビーチからクジラがゆっくりと宙返りする姿を目にすることができます。
方法:ザ・ビッグ・ダック・ツアー(The Big Duck Tour)は、ビクター・ハーバー、グラニット・アイランド・コーズウェイ(Granite Island Causeway)、アデレードから、グループと貸し切りクルーズ両方を行っています。セドゥナ・ツアーズ(Ceduna Tours)はグレート・オーストラリアン・バイト・ホエール保護区(Great Australian Bight Whale Sanctuary)の奥まで連れて行ってくれるので、そびえ立つブンダ・クリフ(Bunda Cliffs)近くの繁殖エリアにいるミナミセミクジラを間近に眺められます。
ブリスベン近郊
時期:5月から11月まで
場所:クイーンズランド州(Queensland)でクジラがよく見られるスポットは、ブリスベン(Brisbane)から北へ約300kmに位置するハービー・ベイ(Hervey Bay)です。ガリ(旧名:フレーザー島)に守られているこの穏やかな場所は、ザトウクジラが出会い、繁殖して、子育てするため、しばらくの間滞在するのに最適です。可愛い赤ちゃんクジラを見る確率を上げるなら、9月の第一週頃を目指して訪れるのがいいでしょう。毎年7月と8月、ザトウクジラの到来を祝うハービー・ベイ・ホエール・フェスティバル(Hervey Bay Whale Festival)では、コンサートやストリート・パレード、展示が催されます。もうちょっと南にあるサンシャイン・コースト(Sunshine Coast)は冒険好きなら必ず訪れたいスポット。サンリーフ・ムールーラバ(Sunreef Mooloolaba)のツアーで沖へ向かい、ザトウクジラと泳いで、彼らの群れの仲間になったような気分を体感しましょう。北へ旅を続けてウィットサンデー諸島(Whitsunday Islands)に来れば、5月から9月の間にこのエリアにやってきて、生まれたての子クジラを世話しながら、浅くて穏やかな海を楽しむザトウクジラの姿を見ることができます。本当に忘れられない体験をお求めなら、ミンククジラ(dwarf minke whales)と泳ぐ専門のツアー会社でツアーを予約しましょう。ここは世界中で唯一、このとても知的で好奇心旺盛な生き物と泳げる場所で、6月と7月の短い期間だけ可能です。クジラとの出会いの際は、泳ぐ人は適切な海のエリアにシュノーケルを着けて降り、ロープにつかまるように指示されて、常にクジラの方からアプローチを開始してクジラの自由な行動に任されています。そうすると、好奇心旺盛なミンククジラが大抵近寄ってきて、ダイバーの周りを何時間も行ったり来たりして、アイコンタクトをとったり、赤ちゃんクジラを見せにきたりすることが知られています。
方法:ザトウクジラの遊び好きな姿を見るには、スピリット・オブ・ハービー・ベイ(Spirit of Hervey Bay)のクルーズに参加するか、「クジラと話す人」と言われる伝説的なガイドのビッキー・ネヴィルのいるタスマン・ベンチャーズ(Tasman Ventures)もおすすめです。マイク・ボール・ダイブ・エクスペディション(Mike Ball Dive Expeditions)は、ミンククジラと泳ぐグループツアーを行っている、グレート・バリア・リーフの数軒しかないツアー会社のひとつです。
メルボルン近郊
時期:5月から9月まで
場所:メルボルンからグレート・オーシャン・ロード(Great Ocean Road)沿いに車で3時間、ワーナンブール(Warrnambool)のローガンズ・ビーチ(Logans Beach)に向かい、海岸近くで子育てしているミナミセミクジラを見に行きましょう。彼らはここに数週間滞在し、亜南極の海に戻る長距離の旅に備えて赤ちゃんはここで体力をつけるのです。砂丘にある展望台から、親子クジラの触れ合う姿を眺められます。またワーナンブールのレディ・ベイ(Lady Bay)に行ってみれば、防波堤に水しぶきがかかるほど母クジラが近寄ってくることが度々あります。グレート・オーシャン・ロード沿いにさらに1時間半走れば、珍しいシロナガスクジラがポートランド(Portland)近くのケープ・ネルソン(Cape Nelson)で、餌を獲る最後の月を過ごしている様子を観察できます。
方法:サウス・ウエスト・チャーターズ(South West Charters)でクルーズを予約して、もっと近くでシロナガスクジラの活動を眺めてみましょう。ザトウクジラやミナミセミクジラ、バンドウイルカやオーストラリアオットセイ(Australian fur seals)などを見るチャンスもあります。