Seal Bay Conservation Park, Kangaroo Island, South Australia © Exceptional Kangaroo Island
野生動物体験で配慮するべきこと
オーストラリアでは、隣人への思いやりを大切にしています。そしてその「隣人」には動物も含まれています。ここでは、旅行者(とオーストラリアの動物)が最高の体験を共有するための方法をご紹介します。
1.責任ある観光を選ぶ
個人でも野生動物を見つけることはできますが、評判の良いツアーに参加するか、プライベートガイドを雇うことをおすすめします。カモノハシのようになかなか姿を現さない動物や、コアラのように生息地が特殊な動物を見つけるチャンスを最大限に引き出すことができるからです。
知識豊富なガイドは、あなたが旅行を通じて大切なことを学べるよう、より豊かな体験を提供し、そして旅行から帰ったら野生動物保護のメッセージを周囲に伝えられるようにしてくれます。また、野生動物ガイドは、動物にとって何が最善なのかを知っており、安全な触れ合いに関する現地の法律を理解しています。
倫理的なツアー催行会社を探すには、まずはオーストラリアン・ワイルドライフ・ジャーニーズ(Australian Wildlife Journeys)へどうぞ。これは、オーストラリアを代表する野生動物体験のツアー催行会社が全国から集結した団体で、象徴的な野生動物の紹介と質の高い解説情報の提供を行っています。
各都市や地方の動物園に行くのもおすすめです。オーストラリアは、動物福祉基準が高い、責任ある体験を数多く提供しています。
たとえばコアラを抱っこすることが許可されている地域でも、コアラが人と触れ合う時間は1日最大30分と定められています。
2.動物に近付きすぎない
人間と同じように、動物にも自分だけの空間が必要です。野生動物や野鳥を観察するとき、もっとよく見たくて、または最高の写真を撮りたくて、ついつい忍び寄りたくなるものです。しかし、知らないうちに動物や鳥を不安にさせてしまうことがあります。一度その場を離れた生き物は、本来安全なお気に入りの餌場に戻ってこなくなってしまう可能性もあります。逃げることを余儀なくされた動物は、貴重なエネルギーを使い果たしてしまい、捕食者から逃れたり食べ物を探したりすることができなくなってしまうかもしれません。
自分が動物に近付きすぎていないかを確認する手がかりは、野生動物そのものにあります。動物がそれまでの行動を止めた場合は、後退して距離を広げてみましょう。それで行動が再開されれば、その動物はもうあなたやカメラを気にしていないので、好きなだけ写真を撮ってかまいません。
3.触りたい気持ちを抑える
オーストラリアの一部の地域には、ウォンバット、カンガルー、そしてロットネスト島(Rottnest Island)のかわいいクオッカなど、好奇心旺盛で人なつっこい動物もいます。彼らはよく人間に近寄ってきます。
つい、触りたくなりますが、その気持ちを我慢するべき理由がいくつかあります。まず、かわいく見えても野生の動物なので、急におびえ出すことがあります。その際に、人を引っ掻いたり、それ以上の危害を加えてしまうことがあります。また、知らないうちに人間から動物に病気をうつすおそれもあるので、接触を避けることが極めて重要なのです。
生き物との距離を保ちさえすれば、動物に触れなくても一度は撮りたいクオッカとの自撮りやウォンバットとの記念撮影は十分可能です。
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ウミガメ、ジンベエザメ、野生のイルカなどの海洋生物と泳ぐときは、決して触らないようにしてください。触らなければ、体表の保護層などを傷付けず、また、動物を怖がらせて逃がしてしまうこともないので、一緒にツアーに参加している仲間のためにもなります。
4.野生動物の赤ちゃんの周囲に注意する
野生動物の赤ちゃんほど愛らしいものはありませんが、赤ちゃんとの出会いの場では気配りが重要となります。親になりたてのときは誰でもそうですが、動物や鳥は子を守ることに神経をとがらせています。おびえた親が、人間に対して攻撃的になる場合があります。ストレスを感じた動物が子育てを放棄することや、鳥が無力な雛を置き去りにして飛んでいってしまうことさえあります。動物と人間の安全のため、赤ちゃんが近くにいるときは通常以上に距離を保ちましょう。
オーストラリアでは、お腹の袋に子どもを入れたカンガルーや、赤ちゃんをおんぶしたコアラ、そして産まれたばかりの赤ちゃんに力を貸しつつ南極へと帰っていくザトウクジラなどの、子連れの動物に出会える可能性があります。もちろん、どれも評判どおりのかわいさです。
5.野生動物の生息地を保護する
野生動物の生息地は、彼らが食べ物を得たり身を守ったりする場所です。そのため、そのままの環境を維持する必要がありますが、私たちもそれに協力する方法があります。
歩くときは、重要な植生を踏み荒らしたり浸食を招いたりしないよう、決められた歩道や展望エリアからはみ出ないようにしてください。
樹木、ワイルドフラワー、サンゴ、貝などはすべて、動物にとって重要な存在です。見つけた場所にそのまま置いておくことが一番です。
反対に拾ってもいいものは、ゴミです。自然豊かな地域を訪ねたら、そこからゴミを取り除き、動物が誤って食べてしまう事故を防ぎましょう。
さらに支援したい場合は、全国で野生動物生息域の保護活動をしている専門家のもとでボランティア活動に参加することもできます。
6.動物が自分で食べ物を見つけられるようにする
オーストラリアの森林は野生動物にとっての天然の食糧庫であり、動物が自分で食べ物を見つけることが重要です。何千年もの間、動物は自然の餌を食べるように進化してきました。与えられれば人間の食べ物を平らげるかもしれませんが、それで体調を崩してしまう可能性があります。人間が食べ物を持っていると学習した動物や鳥が攻撃的になる場合があり、カモメなど一部の鳥は他の鳥の縄張りを奪うおそれもあります。
無邪気にアヒルや白鳥に餌付けをする人は大勢いますが、こういった水鳥をはじめとする野生動物をより深く理解するためには、専門家が同行するツアーに参加して、自然のままの美しさを最大限に発揮している姿をぜひ観察してください。
7.安全運転を心がける
オーストラリアのカントリーサイドのドライブ旅行は楽しさいっぱいですが、都市部以外を運転するときは野生動物に注意してください。カンガルー、ウォンバット、コアラなどの動物は、夜明けや夕暮れに活発に活動し、路上にさまよい出ることが知られています。
傷ついた動物や鳥を見つけたら、恐がらせないように気を付けてください。一番良い方法は、オーストラリア全土で活動している野生動物救助団体に電話することです。たとえばニュー・サウス・ウェールズ州ではWIRES(電話1300 094 737)のボランティアが相談に乗ってくれます。
自分で運転しない場合でも、ガイド付きの野生動物ツアーがたくさんあるので、お好きなものを選ぶことができます。
8.夜行性の動物を気遣う
ポッサム(フクロギツネ)やフクロウなどの夜行性の野生動物は、光に敏感な大きな目が特徴です。夜間に動物と出会いたいなら、比較的刺激の少ない赤色フィルター付きの懐中電灯の使用をおすすめします。フラッシュを使った写真撮影は、動物の目を傷つけるおそれがあるのでやめましょう。
自然豊かな海岸地域では、ホテルの照明が渡り鳥や孵化したてのウミガメのなどの方向感覚を失わせるおそれがあります。必要のないときは灯りをすべて消し、また、部屋の灯りを点けている間はカーテンを閉めておくことをおすすめします。
夜行性の生き物は隠れてなかなか出てこないことがありますが、地元のガイドの専門知識を借りれば、夜間でも動物を見つけられる可能性が高まります。