
ウィルソンズ岬を歩く
目印がわかりやすく整備されたウォーキングトレイルを歩いて、ウィルソンズ岬の自然保護区を探索しましょう。
原文:エリー・シュナイダー
親しみを込めて「ザ・プロム(the Prom)」と呼ばれるウィルソンズ岬は、オーストラリア本土最南端の505平方キロメートルに及ぶ海沿いの原生地域を取り囲んでいます。保護地域にはたくさんのウォーキングトレイルが、人気のない砂浜、ユーカリの森、シダに覆われた涼しげな雨林や岩だらけの山頂を結んで縦横無尽に走っています。眺めの良い短い散歩コースから1日のトレッキングコース、そして数日に及ぶウィルソンズ岬サザン・サーキットまで、様々なコースから選ぶことができます。キャラバン(トレーラーハウス)でのキャンプや、メルボルンから南東に車で3時間ほどのタイダル・リバー(Tidal River)の山小屋やロッジでの宿泊ができます。
ウィルソンズ岬サザンサーキット
サザン・サーキット(Southern Circuit)は、テレグラフ・サドル(Telegraph Saddle)駐車場を起点とする60kmのコースです。密林を通りのどかなシーラーズ・コーブ(Sealers Cove)まで、緩やかなカーブの道が続きます。岬を大きく曲がると静かなレフュージ・コーブ(Refuge Cove)に到着。ここでキャンプをして一晩過ごすこともできます。少し南へ歩いたカーソップ・ピーク(Kersop Peak)では、手つかずの海岸線の息を飲むような美しい眺めを堪能します。その先は、リトル・ウォータールー・ベイ(Little Waterloo Bay)へと続きます。ビーチの終点あたりからライトハウス・トラック(Lighthouse Track)の合流点までは高い崖の縁を通る山道になります。道はその先、起伏のある森林を越え1859年に建てられた灯台まで続いています。灯台まで足を延ばして、3軒あるライトハウス・コテージに宿を取ることもできます。翌朝は、一面に広がる爽やかな海岸の景色の中で目覚めることができます。合流点に戻って、次のテレグラフ・トラック(Telegraph Track)との合流点までは、内陸部の美しいシダ並木の小川のほとりを歩きます。その先はオベロン・ベイ(Oberon Bay)へと続きます。ここでちょっとひと泳ぎしたら、ビーチを横切り、リトル・オベロン・ベイ(Little Oberon Bay)とノーマン・ベイ(Norman Bay)も通過します。タイダル・リバーまで戻ってきたら、水辺にある大きな丸石を観察してみてください。何千年もの時をかけて形が変わり、光にさらされることで色も変化した、ユニークな姿を見ることができます。このハイキングコースは数日を要するため、事前にキャンプ場の予約をおすすめします。
ルーアーン・トラック(Loo-errn Track)からタイダル・リバーとスクィーキー・ビーチへ
タイダル・リバーの堤に沿って曲がりくねった道をスクィーキー・ビーチ(Squeaky Beach)まで歩く30分のウォーキングコースは、体力や時間が限られている人にぴったりです。タイダル・リバーのインフォメーション・センターから出発し、遊歩道を通ってペーパーバークが繁る沼地や足場の悪い湿地帯を抜け、川に向かって進みます。小さな橋を渡りますが、そこでは魚釣りやバードウォッチングが楽しめます。少し寄り道をして、ピラー・ポイント(Pillar Point)まで行ってみましょう。展望台から、ノーマン・ベイと周囲の島々の素晴らしい景色が望めます。タイダル・リバーの橋に戻ると、スクィーキー・ビーチ・トラック(Squeaky Beach Track)へと続きます。ノーマン・ベイとレオナルド・ベイ(Leonard bay)を隔てる岬の高台を越え、スクィーキー・ビーチへと下りる道で、所要時間は約50分です。ビーチまで行ったら、砂浜を散歩してみましょう。足元で石英の白砂がスクィーキーな(squeaky:キュッキュッという)音を立てます。
マウント・オベロン・ネイチャー・ウォーク(Mount Oberon Nature Walk)
オベロン山頂まで往復する登山コースは、2時間の安心して歩けるコースです。歩きながら植生の変化を観察しましょう。テレグラフ・サドル駐車場からスタートして、山頂の岩の露頭まで少し階段を登ります。頂上からは、タイダル・リバーや海岸、沖合の島々のパノラマビューを楽しめます。頂上は寒く、夏(12月~2月)でも強い風が吹くことがあります。暖かい衣服を持参するようにしましょう。
リリー・ピリー・ガリー・サーキット(Lilly Pilly Gully Circuit)
6kmの周回コースで、プロムの多様な植生やたくさんの色鮮やかな鳥や野生動物を見つけましょう。2~3時間で一周できます。リリー・ピリー駐車場から出発し、タイダル・リバーの橋を渡ります。川やノーマン・ビーチ(Norman Beach)の目の覚めるような景色を楽しんでください。道はリリー・ピリー・ガリー・ネイチャー・ウォーク(Lilly Pilly Gully Nature Walk)に入り、ユーカリの森や海沿いのヒースの茂み、温帯雨林を横切っていきます。カンガルー、ワラビー、エミューが木のない場所で草を食べる様子や、ウォンバットが道を横切るのを眺めましょう。ちょうど中間あたりのピクニック場では、アカクサインコやカモメがやってきて食べ残しをきれいに片づけてくれることもあります。海岸沿いのヒースの茂みでは、色とりどりの春(9月~11月)の花が咲き誇る様子を眺めてみてください。背の高いストリンギーバークの木々を抜けて、駐車場まで戻ります。
サウス・ノーマン・ベイ(South Norman Bay)とリトル・オベロン・ベイ
3時間で往復できるこのコースは、タイダル・リバーのインフォメーション・センターが起点です。ティーツリーが生える砂丘を登り、ノーマン・ビーチの南端まで行きましょう。海水浴や初心者のサーフィン、ウィンドサーフィン、ボートを楽しむ絶好のスポットです。ここからでノーマン・ポイント(Norman Point)を回るゆるやかな登り道を歩いてリトル・オベロン・ベイまで行くと、バス海峡(Bass Strait)に浮かぶアンサー(Anser)群島やグレニー(Glennie)群島を望むことができます。スカルロック(Skull Rock:骸骨岩)とも言われるクレフト島(Cleft Island)のごつごつした形を眺めてみてください。
ヴェレキー・アウトルック・アンド・ミラーズ・ランディング・ネイチャー・ウォーク(Verekey Outlook and Millers Landing Nature Walk)
ヴェレカー・アウトルック(Vereker Outlook)までの往復3時間のコースです。バンクシアの森、ストリンギーバークの林、色鮮やかなヒースの茂みを通る曲がりくねった道を行くと、ダービー・サドル(Darby Saddle)、コーナー入江(Corner Inlet)、シェルバック島(Shellback Island)、コッターズ・ビーチ(Cotters Beach)のまるで絵葉書のような美しい風景が広がります。エミュー、ワラビー、カンガルーなどの野生動物の通行を妨げないよう、道を譲ってあげましょう。帰りは、ミラーズ・ランディング・ネイチャー・ウォークにつながるミラーズ・ランディング・リンク・トラック(Millers Landing Link Track)を戻ります。コーナー入江に沿って歩く道で、世界最南端のマングローブの林とたくさんの水鳥たちを見ることができます。
タン・ポイント(Tongue Point)
絵画のように美しい往復5時間のコースを歩きましょう。ダービー・サドルを出発し、ストリンギーバークやモクマオウが繁る林を進みます。スパークス展望台(Sparkes Lookout)まで登る次の行程にすんなり入っていくのに適した道です。展望台でちょっと休憩して、果てしなく続く素晴らしい海岸線を眺めましょう。さらに足をのばしてロックス(Rocks)展望台まで行けば、はるか下にひろがる沖合の島々やタン・ポイントの先端まで眺めることができます。ここから急な下り道になり、ダービー川(Darby River)からの道と合流してさらに進めばタン・ポイントです。風の強いこの半島の先端では、明るいオレンジ色をした岩に砕け散る波を見下ろせます。ダービー川からの道との合流地点の少し手前にあるわき道を行くと、小さなひっそりとしたフェアリー・コーブ(Fairy Cove)の砂浜があります。坂を登って本道に戻るまで、海辺の絶景に浸りましょう。午後の光の中では特に素晴らしい眺めが望めます。